>>>第1回 草津温泉スゴロク、温泉まんじゅうの食べ方など
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平兵衛池の伝説
今はそこが何処だったんだか、誰にもわかんねぇけど、昔、昔の大昔、草津温泉の入り口の前口あたりに、デスっちゅうとこがあったんだ。
デスっちゅうのは、草1本生えねぇ荒れ果てたところっちゅう意味なんだけんどさぁ、そこに1匹のでっけぇ竜が住んでいたんだ。
その竜が、ある時、なーに思ったんだか、急に山を登り始めてな、そりゃー、すげぇ勢いでな、白根のお山に登ったかと思ったら、次にゃあ西の方へ降りて行ってな、そうして、だーれも知らねぇ山奥の、深ーい、深い沼に住み着いたんだ。
このお話はそこから始まるんだ・・・ |
昔、草津温泉に、湯本三家と言って、三軒のおだいじんさんが居たんだけどね、そのうちの一軒に、湯本平兵衛さんって言う人が居なさったんだってさ。湯畑の、滝の下の方で、大きな宿屋をなさってたんだけどね。
平兵衛さんには娘さんが居たんだよ。はるえさんって言うんだけど、そりゃー美人さんでさっ、ここいらでも評判だったんだって。平兵衛さんは、はるえさんを、そりゃあかわいがっていてね、綺麗なべべ着せてあげて、大事に大事に育てたんだってさ。
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ある年の春のはじめに、はるえさんは、お供のロクを連れて、うちのもんに、うめえご馳走をいっぺぇこしらえてもらって、西山の辺りにワラビ採りに行きなさったんだってさ。昔っから、西山の奥には化け物がいるから、入っちゃ行けねえって言われていたんだけどさ、あんまりワラビがいっぺぇあるもんだから、ついつい二人は奥へ奥へと入っちゃったんだってさ。そうしたら、とうとう、どこにいるんだか、わからなくなってね、そうこうしているうちに、綺麗な沼があって。
「ワァー、綺麗な沼だこと。ロク、少しここで休んで行きましょうよ。
私、のどがカラカラだわ。」
「お嬢様、いけねぇよ。ここら辺にゃあ、化け物が住んでるってー、オラのじいちゃんがよく言ってましただ。」
「大丈夫よ。アーッ、おいしい水だこと。」 |
はるえは、ロクの言うことも聞かねえで、どんどん沼に下りて行って、
水をゴクゴク、飲んだんだってさ。それから、綺麗な赤いクシをたもとから出して、髪をすくったんだってさ。すると、どうだろう。
えらいびっくりするような、大きな音がしたかと思ったら、今まで静かだった沼に、でっけぇ波がザワザワと出来て、はるえをひと飲みにしてしまったんだと。
この様を見ていたロクは、転げるように草津の村に駆け戻ってね、話を聞いた村のもんもこりゃー、てぇへんだって事になってさ、平兵衛さんは、いっぺえ人を連れて、はるえを助けに、沼まで行きなさったんだってさ。すると、沼はさざ波ひとつ立ってなくて、鏡のように静かな水の上に、赤いクシが浮いていたんだって。
これゃあー、はるえのクシだ。こんなこと、勘弁ならねぇ。よし、こんな池、壊してくれらー。はるえ、今助けっからなー。待ってろよ。 |
平兵衛は、池の水をみーんな干そうとしたんだって。
池の淵を掘って、水を流してしまおうとしたんだね。そしたら、はるえがスーッと池の真ん中に現れたんだって。
なんと、はるえの頭には1寸程の角が生えていたんだよ。はるえの隣には、大きな竜がみんなをにらみつけていたってよ。これにはみんな驚いて、腰抜かしちゃったんだよ。
「おとっちゃん、私はこうなる定めを持って生まれて来たんです。
私はここで池の主と暮らします。池の水を干されたら、私たちの命はありません。どうかこのまま帰ってください。」 |
これじゃあ、平兵衛さんも諦めるしかねぇもんだから、娘が池に入った日を命日と定めて、供養することにしたんだ。
毎年、その日が来ると、ご馳走をいっぺえ詰めた重箱しょって、池に出かけたんだ。「おーい、おめえの好きなもん、持って来たぞー。」
平兵衛さんが重箱を池の岸に浮かべてやるとな、それがふわふわ・ふわふわと行ってよ、真ん中くらい-まで行くと、さーっと沈んじゃうんだ。
そうしてしばらくすると、空っぽになった重箱が浮かんできて、岸に戻って来るんだ。
平兵衛さんは、毎年この池に出かけていっちゃあ、重箱を供えたんだ。そいで、今でもその池は平兵衛池って呼ばれているんだ。
ああ、それから言っとくけど、池にゃあ白根のお山が火ー噴いてからっちゅうもの、毒水が流れ込んでいるから、今は魚一匹も棲めねえんだよ。それから、池で髪をとかしちゃあいけないよ。
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